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「はじかみ」 第104回フリーワンライ お題:「スパイスをきかせた恋はいかが?」

「どうしてこんなこともできないの? いつまでも私が手伝っていられないっていうのに」
「ごめんね涼ちゃん」
「大体要領が悪すぎるのよ」
 出来が良くて面倒見が良くて、ちょっと辛口な幼馴染みの涼ちゃんは、いつもなんだかんだ言いながら私の作業を手伝ってくれる。
「式は明日でしょ。寝不足なんて絶対できないんだからもっと気合い入れて手を動かして」
「うん、ありがとう。頑張るよ」
 包んでも包んでも終わりが見えなかったドラジェは涼ちゃんの介入により漸く希望が見えてきた。
 明日は私の結婚式だ。本当はもっと早く終わってないといけない作業だったのに、私はいつもこうだ。
「……こうしてると夏休み最後の日みたい」
「無駄口叩く余裕はあるのね」
「あ、ごめん」
「いいわよ。超優秀な私が手伝ってるんだもの、必ず目標までに終わらせるんだから気にせず喋って頂戴」
 確かに涼ちゃんの両手は超高速で動き、正確に美しくドラジェが包まれていく。
 本当にあの頃みたい。
 私は昔からとろくて要領も悪くて、毎日夏休みの宿題をやっているはずなのに、夏休み最後の日には宿題が大量に残っていて、七月中に日記以外の宿題を終わらせた涼ちゃんが毎年助けにきてくれていたのだ。
「私も涼ちゃんみたいになりたかったな」
「あなたには無理よ」
「そうだね」
 生まれながらの出来が違うとしみじみ思う。だけど嫉妬はしない。だってこんなに駄目な私に今も付き合ってくれるなんて超良い子だもん。
「大体今日これを手伝うべきは新郎じゃないの? どこ行ってるの?」
「独身最後の夜だから友達と飲みに行くんだって。結婚したら今までみたいで自由じゃなくなるからって」
「良いご身分だこと」
 涼ちゃんは賢いから、私の考えの及ばないところで私の結婚相手を良く思ってないらしい。
 付き合うのも結婚も相手に言われるままで私がなにも決めてないんじゃないか、って。
 私としてはなんでも向こうが決めてくれるのは優柔不断な私に合ってるんじゃないかしらと思うのだけど。
「あ、すごい。あんなにあったのに、もう終わっちゃった」
「私が手伝ったんだから当然でしょ」
「本当にありがとう。そうだお礼に夕飯食べてってよ。お母さんに言ってくるから」
「花嫁修業の成果は見せてくれないの?」
「それはねーまだ頑張ってる最中かも。また今度ね」
「その今度って何年後かしら」
 涼ちゃんは料理も上手いから、どんなに修行しても自信を持って料理を出せない気がする。
 しかもおしゃれなんだよね。私のは本当に家庭料理って感じだし。
 小さな食卓を涼ちゃんと囲む。これも夏休み最後の日の風物詩。
 今日のメニューは本当に簡素なものだ。結婚式の前日でお母さんもばたばたしていたから、昼の煮物の残りとご飯、お味噌汁。それから佃煮と漬け物。
「はじかみがかぶってる」
 そんな食卓を見て涼ちゃんが一言そう言った。
「え、はじかみは一つだけだよ」
「料理のはじかみはこの漬け物よね。でも実山椒の佃煮もあるでしょ。山椒のこともはじかみって呼ぶのよ」
「そうなの?」
「日本古来の口に入れて辛いものの総称なのよ。生姜も山葵も辛子も全部」
 涼ちゃんは物知りだな。
「端っこだけ噛むからはじかみなのかと思ってた」
「小学生みたいなことを言うのね」
「じゃあ涼ちゃんもはじかみなの?」
 じろり、と睨まれる。涼ちゃんの辛口をはじかみに例えるのは駄目だったみたい。
「美味しいし、爽やかだし、私ははじかみ好きだけど」
「……私もよ」
「涼ちゃんのことも大好きだよ」
「そこは同意しないわ」
 やっぱり辛口。
 びっくりするくらい普段通りの夜で、思い出話とかもっとしんみりするものだと思ってたけど、こういうのも悪くない。
「もし結婚が嫌になったら連絡しなさい。嘲笑いに行ってあげるから」
「うん」
「そのときは今日以上に食卓をはじかみだらけにしてあげるわ。あなた辛口が好きみたいだし」
「うん」
「私だって暇じゃないんだから早めにしてよ」
「わかった」
「あなたのわかったって信用ならないのよねえ」
 普段通りの幸せな夜だ。独身最後の夜にはちょうど良い。
 そんなことを考えてにこにこしていたらはじかみを口に突っ込まれた。
 今夜もぴりっと辛いのね。

「素敵な縁結び」 第102回フリーワンライ お題:「太陽に憧れる星」

 人間程良いのが一番いいのだと思う。
 程良く美人で程良く善人で程良く賢い。
 程良い人間の周りには人が良く集まってくる。
 周囲を程良い陽気で暖かくする、彼女は太陽のような人だ。

 程良くない人間は、遠巻きにされる。
 劣っていても秀でていても人は寄ってこない。
 夜空に輝く白い小さな星は、太陽よりも大きくて太陽よりも熱い。
 生き物に恵みなんて与えない独りぼっちの星だ。

 友達になれたらいいな、と思う。
 あの太陽みたいな子なら受け入れてくれるんじゃないだろうか。
 だけど私の白い熱はあの子を燃やしてしまうだろう。近付かないのが賢明だ。
 今日も遠巻きにあの子を見ているの。


 休日は通帳と睨めっこ。
 働けばお金は貯まるけれど、使い道はない。
 まだ未成年で家族と同居しているし、服もお母さんが買ってくるのを着てるくらいでこだわりはない。
 友達でもいれば遊びに使えるのだろうか。
 そういうときにあの子の顔が浮かぶのだ。話したこともないのに。
 どんなファッションが好きなのかな?
 お気に入りのカフェはどこ?
 休日を費やしてしまうような趣味はなに?
 恋みたいだね。片思いだけど。

 少し考えて文房具を買うことにした。
 大人になっても使えるような、ちょっといいやつを買おう。
 銀座のお店に行けば色々ありそう。色がきれいで重心が低い筆記具が欲しいかもしれない。


 月曜日、何故だかクラスでひそひそされている気がする。
 昨日買った新しいペンが不格好に見えて笑われているのかもしれない。
 寸胴で重心低くて、ちょっと高いけど保証付きのいいペンなんだけどな。首から提げることもできるし。

 火曜日、何故かぼっちの私に少し人が寄ってきた。
 どうやら誰かがペンの値段を調べたらしい。試し書きさせてほしいと言われた。
 なんだか嫌な感じだったので断った。

 水曜日、あの子まで寄ってきた。
 他の人と同じように試し書きさせて欲しいと。この子以外なら迷わず断るのに。
 迷いながら曖昧に言葉を濁す。

 木曜日、またあの子がやってきた。
 どうしても使ってみたいのだと言う。
 私は、あの子の笑顔を私に向けて欲しかったの。

 金曜日、体育から戻るとペンが消えていた。
 不用心だったと言われればその通り。高額で無くしたら困るものを持ってきていた私が悪い。
 あの子は私のところへ来なかった。
 ペンを無くした私に用は無いのだろう。



 土曜日、街外れのカフェで書き物をするあの子を見かけた。
 不用心にもほどがある。あのペンはこの街では売っていないのに。
 夢中になってスマホのシャッター音にも気付かない。

 月曜になったら、あの子の友達になってと言いにいこう。
 そして私は太陽に寄り添う星になる。
 きっと骨も残らないくらい、傍にいてくれるよね?

「土に溶ける素材」 第98回フリーワンライ お題:「クローン」

 ある日クローンが合法になった。
 自分自身のクローンは自分が責任を持って養育すること、というルールの上で。
 まず喜んだのは大学教授と科学者だった。例え自分が死んでも同じ頭脳がいつまでも自分の研究を引き継いでくれる。
 次に喜んだのは跡継ぎに恵まれない一次産業に従事するもの。都会へ出て行ってしまった子供の代わりに自分が跡を継げばいい。
 それなりに高額であったにも関わらず、一度目の募集はすぐに予約でいっぱいになった。

 それから二十余年、今度はクローンが自らのクローンを作ろうと動き出した。
 オリジナルが持っていた知識や経験を若い脳で吸収したクローンたちはみな優秀で、次世代のクローンを作ろうと考えることは自然な流れであった。

 ところがクローンがクローンを作ることに反対するものたちが出てきた。
 それはオリジナルが残した実の子供や孫たち。
 いつまでもオリジナルが生きているようで気持ち悪いと言い出したのだ。
 勿論クローンたちはオリジナルではない。外見や適性は引き継いでいても、全く別の人格であり、自分たちのオリジナルを敬愛し、クローンであることを誇りに思っていた。
 だからこそ問題はいつまでも解決しなかった。
 遺伝子上は骨肉相食み、他人以下の感情で争い、双方矛を収めることはなく、やがてクローンたちは勝手に自らを複製し、子孫たちはクローンが生まれる前に施設を破壊した。

 オリジナルが残したかった知識も経験も捨て、クローンは争いの知恵をねじ込んだ。
 子供が死に孫の孫の代になっても理由を失ったまま、クローンを排除し続けた。

 やがて知識と経験と最初からクローンを必要としなかった人類が息絶え、文明を維持する技術が失われても、彼らは争いながら最期まで和解することなくやがて滅びた。



 破壊を尽くした末の破滅は記録すら失われてしまう。
 新しい文明が生まれるころ、僕はもう跡形もなく消えてしまっているだろう。
 もう思い出せない。僕はクローンだったのか子孫だったのか。クローンの子孫だったかもしれない。クローン施設の機械だったかもしれない。

 栄華を極めて雑に滅びた文明は優れたリサイクル社会だったので滅びても自然に優しい。
 教訓も過ちも何一つ大地に残さない。

 願わくば次の文明はもっと愚鈍でありますように。

「悪の組織わたわた」 第86回フリーワンライ お題:「彼の枕」

「腕枕ってあるじゃない。あれってやりたがる人多いけれど寝にくいよね」
 へーそうなんだーと聞き流す。
 生憎そういった経験は無い。腕枕なんて現実にあるんだね。
「わかる。高さが合わなかったり」
「枕専門店で高さと柔らかさのカスタマイズできたらいいのに」
 きゃっきゃと盛り上がる友達を尻目に、枕専門店に男性が入店し、改造されて出てくるところを想像する。
 わお、とっても悪の組織っぽい。
 きっと腕以外にも彼女向けにカスタマイズされてしまうに違いない。
 ということは彼女が悪の組織の総統になるのか。
「彼の脚で膝枕もしたりするの?」
 ふと気になって聞いてみる。
「ああ、あれも人によってはいまいちだよね。ちょっとお肉あるといいんだけど細い男の人だと硬くって」
「枕にするならお肉あったほうがいいよね」
 つまり悪の組織では太腿も改造されるようだ。
「他の場所は?」
「えーお尻とかお腹とか、胸板とか……ってなに言わせるのよ。興味なさげな振りして非道い」
「気になっただけだし」
 お腹もお尻も胸板も綿を入れられてどんどん想像の彼氏がぬいぐるみと化していく。いや、ぬいぐるみは枕にはしないか。
 しかし男性を改造して綿だらけにするって、弱そうな悪の組織だ。攻撃力殆ど無いじゃん。
 でも真綿で首を絞めるって言葉があるし、精神攻撃に秀でているのかも。
 ふかふかの体で抱きしめて、正義の味方を眠らせて、やる気を奪っていくと考えたら強いような気もする。
 実際この時期の綿のものはとても心地良い。
 半纏も、こたつも、布団も。
「……布団は対人類最終兵器だった?」
「え?」
「いやなんでもない。寝心地求めるなら布団と付き合えたら最高なんだな、と思っただけ」
「あーそうねえ、布団と結婚できたらいいわー」
 この世界のどこかには彼氏たちを枕や布団に改造し世界征服を企む彼女たちがいるのかもしれない。
 そして気が付けば日常が布団と枕による心地良い眠りに冒されているんだ。
 征服の目的が思い浮かばないけど。
 なんて、莫迦なことを考えてランチタイムを終える。
 リア充な友達たちはまだ彼氏の話で盛り上がっている。

 いつか私にも彼氏ができたら本当に綿を詰めて改造してみちゃおうかな。これで私も悪の総統の仲間入りだ。
 ……それより枕を彼氏にするほうが手っ取り早そうだけど。

「住む世界が違いました」 第78回フリーワンライ お題:「君の隣で窒息死」

 知らなかったの。
 恋がこんなにも苦しいなんて。

 重たい。体も頭も心も。
 私の血液に酸素が回らなくなってどれくらい経ったかしら?
 辛うじてまだ止まっていない心臓は、君への想いだけを体中に送り出す。

「そんなに口をぱくぱくさせてなにが欲しいの?」
 君よ。
「そんなに丸い目でなにを見てるの?」
 君よ。
「ばたばたと、どうしてもがくの?」
 君が欲しいの。
 いま私は焦がれた君の隣にいる。
 どんなに苦しくても離れたりしないわ。

 一目で恋に落ちた私を君はどう思っているのかしら。
 ただの愚かな獲物だと笑うのだろうか。
 私と君は住む世界が違う。それでも出会ってしまった。それは奇跡みたいな確率だ。
 元居た世界がきらきらと光って、戻っておいでと囁くけれど、私はこの新しい苦しい世界から出て行ったりしない。
 君が居るから。
 きっと最期まで君が隣に居るから。





 庭の池の小魚を掬って遊んでいたらママに見付かってしまった。
 ママの声で慌てて池に戻そうとしたのに、小さくて赤いやつが一匹、死んでしまっていて水面に浮かんできてバレた。
 叱られて嫌な気分だ。あの赤いやつのせいでひどい目に遭った。
 あーあ……今度は見付からないようにしようっと。
プロフィール

イマイマイ

Author:イマイマイ
へたれゲーマー。最近はもっぱら家庭用。
本命はテクニクビート。愛してます。

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