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「新しい朝がきた」第118回フリーワンライ お題:「会いたいと夢を見る」

 何年も会ってない、会いたい人がいる。
 その人はいつも前向きで積極的で、よく笑っていたと思う。
 思う、という曖昧な記憶は、笑っていたその顔そのものを思い出せないから。でも毎日がきらきらして楽しそうに笑っていた筈だ。
 会えなくなってどれくらい経っただろうか?
 もう遠い昔のようにも思えるし、昨日のことだったかもしれない。
 耳たぶ辺りで切り揃えられていた私の髪も伸び、随分長くなった。あの頃はカラーリングもしてなかったな。
 会いたい人は今の私を見て、私だって気付いてくれるのかしら。
 コンタクトレンズじゃなくて、あの不格好な黒縁のメガネをかけたら思い出してくれるかしら。

 私の毎日は鈍色の雨のように容赦なく私の肩を濡らしていく。
 それでも私は小さな傘をさして、平気そうな顔をして歩いていけなければならない。
 ただそんな日々の中で、ふっと会いたくなる。
 一瞬でも会えたら、安らぎを得ることができるんじゃないか。そんな希望を持ちながら。
 そんな都合のいい展開はあるわけもなく、体が冷えたまま歩いていく。

 夢に楽土求めたり。
 疲れてしまった私は眠ることにした。
 それこそ限界まで寝たら会いたい人に会えるんじゃないか。
 会いたいと夢に出るって言うじゃない。
 眠れるお薬と温めた牛乳と、少しのお酒。
 少し、だったかしら? 少し曖昧な量。まあいいのよ、これからたっぷり眠るつもりなんだから。
 おやすみなさい。いい夢を。どうかあなたに会えますように。



 牛乳にたらしたブランデーみたいなセピア色の混濁の中で、あの人が泣いていた。
 駆け寄ろうとしても体が重くて動かない。
 手を伸ばした私に気付いたのか、鼻をすすりながらとぼとぼと歩み寄ってきてくれた。
 泣き顔こんなにブスだったかな。
 切り揃えられた黒髪のおかっぱと、重たすぎる黒縁のメガネ。全然似合ってないじゃない。
「泣かないで、笑ってちょうだい」
「無理だよ。どうして私が死にかけてるのに笑えるって言うの」
「前向きで積極的で毎日が楽しかった頃の私に会いたかったのに、どうして笑ってくれないの? これじゃ私が救われないじゃない」
 泣いているブスはずれたメガネをぐいっとあげて、私を憎々しく睨む。
「こんな暗い未来、私は嫌。過去に、夢に、救いを求めるなんて絶対に嫌」
 はっきりと今の私を拒絶されて、望みは叶わなくて、悲しくて仕方ないのに、人目を気にしない醜い泣き顔が何故だかすごく愛おしく思えた。
 そりゃ将来の自分がこんなのだったら嫌だし、笑えないよね、なんて納得もする。
「あの頃みたいに笑えるようになったら、今度は笑ってくれる?」
「……そんなの、笑えるようになってから言って」
「それもそうだね」



 新しい朝がきて、激しい頭痛と酸っぱい悪臭の中、清々しい目覚め。
 どうやら寝ながら嘔吐してたみたいだ。窒息死しなくてよかった。
 掛け布団はセーフ。敷き布団はあとで被害確認。
 もし布団が駄目で捨てるなら、ついでに色々捨ててしまおうか。
 なんだかすっきりしてみたいし。

 例えば、雨の中を歩くには小さすぎる傘とかね。

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