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「夜に降る」第144回フリーワンライ お題:「ひとかけらの恋」

 気が多くてしょうがない。
 全ては夢が悪いのだ。


 それは手を重ねる夢。
 仲睦まじくお喋りしながら、袖の触れ合う距離で、はたと気付く。
 折角だから手を繋ぎたいな。
 勇気を出してそろりと手を伸ばす。届け、気付け。
 私の世界一長い数秒を終わらせたのは、そうっと触れた小指に気付いた彼だ。
 速やかに行われた自然な恋人繋ぎは、手慣れているのかしら?
 彼の様子を窺うと、表情が少し硬くて、きっと私も同じ顔をしてる。
 良かった。
 安心して手を握り返す、そんな夢。

 夢に出た彼は恋人でも想い人でもなんでもない。
 たまに挨拶する出入り業者のお兄さんだ。
 昨日までなんとも思ってなかったのに、夢を見たせいか、視線が彼を追う。


 それは唇を重ねる夢。
 恥ずかしげもなく、何度も慈しむように啄む。
 そうせずにはいられないのだ。だって愛しくて可愛くて、そうしたいのだから。
 バードキスでここまで昂ぶるのならこの先にはなにが待っているんだろう。
 でもまだだめ。
 まだこうしていたい。
 呼吸をするようにキスを続けていたい、そんな夢。

 友達の弟は、友達の弟だ。
 好青年で可愛いけれど、恋愛の対象じゃない。
 だけど夢に出てきた彼が今は愛しくて、まだ恋ではないけれどいつもより優しくしてしまう。


 それは体を重ねる夢。
 モノのように乱暴に、ただの孔として私が存在するように。
 蔑まれて、哀れまれて、プライドも体もドロドロに溶けていく。
 私は私を脱ぎ捨てたかったのだと思い知らされる。
 ぐんにゃりとした体は、もう私を縛らない。
 魂は自由に叫びだし、歌うように喘ぐ。
 もっともっと貪って、消費して、体も魂も手放すの。
 貴方の欲望が私を助けるから。
 長くて短い熱情が渦巻く、そんな夜の夢。

 決して恋慕を抱くような相手ではない憧れの作家と、この先個人的に知り合うことはないだろう。
 だけど諦めきれなくてハードカバーの小説を抱きしめる。
 ここになくても、そこにあるものを探すように。


 ひとかけらずつ、想いをばらまいて、あっちにもこっちにも気がそれる。
 恋なんてしたことない顔で、私は毎日新しく恋をする。
 きっとどれも手に入らない恋だけど、それも全ては夢のせい。
 明日もきっと誰かにひとかけらだけ恋をするのだろう。
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イマイマイ

Author:イマイマイ
へたれゲーマー。最近はもっぱら家庭用。
本命はテクニクビート。愛してます。

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