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「土に溶ける素材」 第98回フリーワンライ お題:「クローン」

 ある日クローンが合法になった。
 自分自身のクローンは自分が責任を持って養育すること、というルールの上で。
 まず喜んだのは大学教授と科学者だった。例え自分が死んでも同じ頭脳がいつまでも自分の研究を引き継いでくれる。
 次に喜んだのは跡継ぎに恵まれない一次産業に従事するもの。都会へ出て行ってしまった子供の代わりに自分が跡を継げばいい。
 それなりに高額であったにも関わらず、一度目の募集はすぐに予約でいっぱいになった。

 それから二十余年、今度はクローンが自らのクローンを作ろうと動き出した。
 オリジナルが持っていた知識や経験を若い脳で吸収したクローンたちはみな優秀で、次世代のクローンを作ろうと考えることは自然な流れであった。

 ところがクローンがクローンを作ることに反対するものたちが出てきた。
 それはオリジナルが残した実の子供や孫たち。
 いつまでもオリジナルが生きているようで気持ち悪いと言い出したのだ。
 勿論クローンたちはオリジナルではない。外見や適性は引き継いでいても、全く別の人格であり、自分たちのオリジナルを敬愛し、クローンであることを誇りに思っていた。
 だからこそ問題はいつまでも解決しなかった。
 遺伝子上は骨肉相食み、他人以下の感情で争い、双方矛を収めることはなく、やがてクローンたちは勝手に自らを複製し、子孫たちはクローンが生まれる前に施設を破壊した。

 オリジナルが残したかった知識も経験も捨て、クローンは争いの知恵をねじ込んだ。
 子供が死に孫の孫の代になっても理由を失ったまま、クローンを排除し続けた。

 やがて知識と経験と最初からクローンを必要としなかった人類が息絶え、文明を維持する技術が失われても、彼らは争いながら最期まで和解することなくやがて滅びた。



 破壊を尽くした末の破滅は記録すら失われてしまう。
 新しい文明が生まれるころ、僕はもう跡形もなく消えてしまっているだろう。
 もう思い出せない。僕はクローンだったのか子孫だったのか。クローンの子孫だったかもしれない。クローン施設の機械だったかもしれない。

 栄華を極めて雑に滅びた文明は優れたリサイクル社会だったので滅びても自然に優しい。
 教訓も過ちも何一つ大地に残さない。

 願わくば次の文明はもっと愚鈍でありますように。
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イマイマイ

Author:イマイマイ
へたれゲーマー。最近はもっぱら家庭用。
本命はテクニクビート。愛してます。

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