「腕枕ってあるじゃない。あれってやりたがる人多いけれど寝にくいよね」
へーそうなんだーと聞き流す。
生憎そういった経験は無い。腕枕なんて現実にあるんだね。
「わかる。高さが合わなかったり」
「枕専門店で高さと柔らかさのカスタマイズできたらいいのに」
きゃっきゃと盛り上がる友達を尻目に、枕専門店に男性が入店し、改造されて出てくるところを想像する。
わお、とっても悪の組織っぽい。
きっと腕以外にも彼女向けにカスタマイズされてしまうに違いない。
ということは彼女が悪の組織の総統になるのか。
「彼の脚で膝枕もしたりするの?」
ふと気になって聞いてみる。
「ああ、あれも人によってはいまいちだよね。ちょっとお肉あるといいんだけど細い男の人だと硬くって」
「枕にするならお肉あったほうがいいよね」
つまり悪の組織では太腿も改造されるようだ。
「他の場所は?」
「えーお尻とかお腹とか、胸板とか……ってなに言わせるのよ。興味なさげな振りして非道い」
「気になっただけだし」
お腹もお尻も胸板も綿を入れられてどんどん想像の彼氏がぬいぐるみと化していく。いや、ぬいぐるみは枕にはしないか。
しかし男性を改造して綿だらけにするって、弱そうな悪の組織だ。攻撃力殆ど無いじゃん。
でも真綿で首を絞めるって言葉があるし、精神攻撃に秀でているのかも。
ふかふかの体で抱きしめて、正義の味方を眠らせて、やる気を奪っていくと考えたら強いような気もする。
実際この時期の綿のものはとても心地良い。
半纏も、こたつも、布団も。
「……布団は対人類最終兵器だった?」
「え?」
「いやなんでもない。寝心地求めるなら布団と付き合えたら最高なんだな、と思っただけ」
「あーそうねえ、布団と結婚できたらいいわー」
この世界のどこかには彼氏たちを枕や布団に改造し世界征服を企む彼女たちがいるのかもしれない。
そして気が付けば日常が布団と枕による心地良い眠りに冒されているんだ。
征服の目的が思い浮かばないけど。
なんて、莫迦なことを考えてランチタイムを終える。
リア充な友達たちはまだ彼氏の話で盛り上がっている。
いつか私にも彼氏ができたら本当に綿を詰めて改造してみちゃおうかな。これで私も悪の総統の仲間入りだ。
……それより枕を彼氏にするほうが手っ取り早そうだけど。
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