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第54回フリーワンライ お題:「時間切れ」

 一体いつまで待てばいいのだろう。
 ガラにもなくイライラしているが、横にいる二人の鬼も申し訳なさと苛立ちを混ぜ合わせたような表情をしているので八つ当たりすることもできない。
 実際彼らは全く悪くないのだ。
 コンビネーションを要求される仕事だから連帯責任というものはあるのだろうが。
 わざとらしくため息を吐くたびにびくっと跳ね上がるのを見るのも気の毒だ。鬼なのだからもっと偉そうにしていてもいいのに。
「三人目がこのまま来なかったら、俺ってどうなるの?」
「来ます。大丈夫です」
 回答にはなってない。
「ケータイとかそういう通信手段はないの?」
「あるんですけど呼び出し中のまま繋がらなくて」
 あるのかケータイ。意外とハイテクだな鬼。

 俺が山登り中に滑落して死んで、今日で三日になる。
 三日前死後すぐにやってきた二人の鬼はあの世からやってきて死んだ肉体から精気を吸出し、肉体を腐らせるという仕事をしているらしい。
 ところが肉体から魂を抜いてあの世へ連れて行く役割をもった鬼が死後三日経ってもやってこない。
 三人組の仕事は魂を抜いてから精気を抜き体を腐らせるということで、二人の鬼も全く仕事ができない状況で一緒に待ちぼうけている。
 おかげで夏だというのに腐ることもなく、怪我をしている以外は眠っているようなつやつやの俺の死体が誕生してしまった。
 これが山じゃなくて街中だったらちょっとした騒ぎになるね。腐らない死体として研究機関に引き取られてしまうよ。
 せめて死蝋みたいになってくれれば死体として認識してもらえるんだろうか。
 今のところ誰にも発見されていないが、いつかは見つかってしまうだろう。それまでにきちんと死ねるのか不安になってきた。

 ところで俺に対して捜索願などは出されているのだろうか?
 一人暮らしだし、夏休みを利用して山に来ていたのだから、恐らく知り合いはまだ誰も俺の失踪に気付いてない。
 来週になれば出社しないことで上司から捜索願が出されるかもしれない。
「鬼って時間の感覚は人間と一緒なの?」
「かなり違うと思います。人間の一日の感覚がわかる時計を支給されてますけど、かなり短く感じますし」
「じゃあ三人目の遅刻もそんなに大した時間じゃないのか」
「遅刻厳禁なので時間の問題ではないですけどね」
「それなら遅刻するのは珍しいことなんだな」
 尚更彼らが気の毒だ。
 とはいえもう退屈がピークに達している。
 昨日は鬼たちに頼んで自分の死体を観察してみた。つむじとか背中とか生きてるうちには絶対見ることができないから記念に見ておこうかと。
 心臓はちゃんと止まっていたし、体温は分からなかったが鬼たちによると気温と同じくらいと言うからどんなに寝ているように見えても完璧に死んでいた。
 今日はもうそんな死体遊びにも飽きてだらだらと思い付くまま鬼たちに話しかけるだけだ。
 明日になったらいよいよ話すこともなくなるかもしれない。

 ときどきなにかこっそりやってるなあと思ってたけど、退屈しのぎによく見たら鬼が持ってるのはケータイじゃない。実物見たことないから知らないけどあれは多分ポケベルだろう。
「あっ」
 突然画面を見ていた鬼が小さな声で驚いたような声を出した。
「どうした奪精鬼」
「ここに来るはずだった新人の奪魂鬼が逃げたみたいです」
「代わりは?」
「奪魂鬼は全員シフトが埋まってて、初七日中に空きがないそうです」
「それはもう、時間切れ、ということになるな」
「そうなりますね」
 なにやら小声で相談しているが丸聞こえだ。
 来るはずだった新人が逃げて代わりの確保ができなくて顔面蒼白になっている。
「すみません、こちらの都合なんですけど、期間内にちゃんと死んでもらわないと大変なことになるんですが、それを達成するのが非常に厳しくなりました。大変お待たせして申し訳ないのですが怪我の治療とかサービスしますんで生き返ってもらいますね」
「へ?」
 なにもなく突然そんなことを言われ戸惑うが、俺の死体の傷がみるみる治っていく。
「生き地獄に戻すのは申し訳ないですがまた迎えに来ますのでそのときは必ず!」
 なにも言えないまま、そこで意識が途切れた。



 体の痛みで目が覚めた。
「いてえ」
 ああそうだ俺は山道で足を滑らせて滑落し、運よく低木の上に落ちたらしい。
 衝撃でしばらく気を失っていたようだが、切り傷だけで骨は折れてなさそうだ。
 なにか夢を見ていたような気がするが、まあいい。とりあえず下山しよう。
 夏休みなのに行楽中に落ちて気絶するなんてツイてないね全く。
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Author:イマイマイ
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本命はテクニクビート。愛してます。

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